硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
0、硝子の靴と主人公と爺さん登場。

「おめでとうございます! 貴方です!!!」
 ぱんぱかぱんぱんぱーん! ぱんぱんぱんぱんぱかぱーん!!!
 一体どこに隠れていたというのか、トランペットを持った兵隊さん登場。ファンファーレが鳴り響く。・・・え? なんすか? なんなんすか? ちょっと?
 ポカンと口を開けたあたしは、洗い物をしていた冷たい手を蝶ネクタイをした爺さんにひょいと取られ、そのままの顔を向けた。目が合うと「ふぉっふぉっふぉっ」とか笑った爺さん。「では行きましょうか」と、ゆっくりとその手を前に移動させる。
 その弾みで一歩、足が出る。しかしもう一歩出しかけて、履いている物がとても、もろいものだと思い出して、慌てて爺さんの手を掴んで引っ張った。そりゃ確かに、結構力を入れてしまったよ。それは認めるけれども。
「おおっ」と、呟いた割に爺さん、抵抗もなく転がった。弱いにも程がある。もう少し足腰を鍛えろ。
「ああっ」
「大丈夫ですか!?」
 一体どういう御立場なのか。
 爺さん兵隊さん達に抱き起こされながら何が可笑しいのか、また「ふぉっふぉっ」と笑った。ええと・・・大丈夫か? 爺さん。悪い悪い。でも貴方も注意力が足りなくってよ。
 そう思いながら、あたしも取り敢えず笑っておく。笑った者勝ちです。
 その気の抜けた笑い声に気付いたか、「何をする!?」・・・と、言いかけたような中途半端な顔をした兵隊が顔を上げた。しかしスカートの裾をたくし上げているあたしに気付き、再び足下に視線を戻し、靴を見てあたしの行動の理由に気付いたようだ。そして我に返ったように怒りを仕舞う。
 というか、あたしも我に返った。
「えっち! 何見てんのよ!!」
 と、さっき気遣った筈の靴を履いたまま、兵隊の顎をけっ飛ばす。「ぐえっ」とか言った兵隊、見事に散った。
 そして、「硝子の靴」も散った。




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