硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 1、お城にようこそ?

 兵と硝子の靴が散った後、あたしは拉致されるように馬車に乗せられ、そして城まで連れてこられてしまった。
 ・・・されるようにっていうか、完璧拉致だよ。これ。完全に、あたしの意思無視だもん。
 エプロンを掛けたままの普段着。色は褪せかけ、ちょっとだけほつれているところもあるスカート。そんなあたしは今、王室にいる。贅沢に飾られた大束の花。レースのカーテン。分厚い絨毯。お洒落なテーブル。その側に座った、ふてくされた表情のあたし。
 異常事態発生中。何でこんな事になってんだ。おい。つまり、そんなことを呟くあたしがここにいるというだけで、それはもう、かなりの異常事態なのである。
 ここは超非常識人の巣窟である。そう思うと、それらに感動している暇のないあたし。ムスッとしたまま、あたしは部屋を見回しているのも飽きて・・・というか帰る画策を練っていて、ドアばかり見ていた。ほらね。こんなふてくされた顔の人間がここにいること自体、間違いなく異常事態発生中なのである。
 その大元であるあたしの視線の先。無意味じゃないか? と思うほどに、こまっっっかーーーい細工のされたドア。鍵はないようだ。勝手に帰るか? いやいや、この部屋に来るまでに何度角を曲がったか。そして階段を上り下りしたことか。迷う。絶対迷う。
 そう思いながら見ていたドア。
 ・・・・・・が、開いた。
 おお? と思って目を丸くし、組んでいた足はそのままに頬杖だけ解くあたし。
 開いたドアの向こうには、そのドアを開いたと思われるあの足腰の弱った爺さんと、若い男が立っていた。おいおい。良い若いモンが。ドアくらい自分で開けろよ。
 と、思っていたら爺さん、しずしずドアを閉める。おいおい。良い若いモンが。ドアくらい自分で・・・。
 と、思っていたら男は言った。「お前は誰だ」と。




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