硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
7。

 失礼で、そして弱弱王子。名前はクリスロット。略してリス。そして世間知らずときたもんだ。最低である。
「あんた、何言ってんの? 標準よりはでかいけど、そこまで異常じゃないわよ。失敬ね」
 友達なんか、そろそろ27とか言ってたよ。凄いね。どこまで成長するつもりなんだろうね。彼女。
 と言おうと思ったら、リスが顔を上げる。
「嘘付け! 貴族の令嬢達に聞いたら、せいぜい23って言ってたぞ!!」
「知らないよ。そんなん。あまり歩かないからじゃないの? それとも無ければサバ読んでるか」
「・・・最悪ー」
 がっくり。リスはそう言って、再び机に突っ伏す。お前が最悪だ。何、訳の分からない話をしているんだ。
「・・・てか、さー」
 あたしの中に、ある疑惑が浮上。見ている限り、何だか原因はこいつにある気がしてきたぞ。
 立ち上がり、近付いて突っ伏している腕に顔を近付ける。そして、耳元に囁いた。
「もしかして、この状態ってリスのせい?」
「え? ・・・っわーーーー!!」
 間近に覗き込んだ、あたしに驚いたらしい。リスはそう言って椅子から転げ落ち・・・そうになり、辛うじて踏ん張る。そして立ち上がり、息を切らせて叫んだ。
「ビックリさせるな!」
「質問に答えて」
 あたしはずずい、と詰め寄って、その顔を覗き込んだ。冗談じゃないわよ。もし貴方のせいなら、怒っちゃうわよ。あたし。
「う・・・」
 強気に迫ったあたしに怯えたのか、リスはそう言って壁際にひっつく。
 そして意外にも結構な背の差があった為、その顔を下から覗き込み、あたしは言った。
「ねぇ。どうなの? あたしがここにいるのって、リスのせいじゃないの?」
 それなのに? あんた何て言ったよ。「お前は誰だ」「田舎者」「何しに来た」「お前頭は大丈夫か?」。・・・思い出せば思い出すほど、ムカついてきた。あんた、返事によっては五体満足でこの部屋から出られると思うな!
「・・・ええ、と・・・」
 そのオーラを感じ取ったらしい。リスは顔を逸らし、あまり刺激しないように小さな声で答える。
「・・・そう・・・かも・・・しれない・・・ねぇ」
「そうかも?」
「うん! そうだと思う!」
 胸ぐらを掴んだあたしに向かって、リスは大きく頷いた。そうそう。素直に話せば良いんだよ。
「どして?」
 その理由くらい、冷静に聞いて上げようじゃないの。ま。その後は分からないけどね。
「・・・硝子の・・・靴を・・・」
 またしても、そのオーラを感じ取ったらしい。リスは顔を逸らし、再びあまり刺激しないようにと気遣っているのか、やはり小さな声で答える。
「履けた人を・・・その・・・」
 チラ、とあたしを見てから、リスは更に小さな声で言った。
「姫として・・・・・・・・・・・・・・・かな・・・なんて・・・」
「聞こえない!」
「あの硝子の靴にピッタリな足のサイズの人を姫つまり俺の奥さんとして迎えようかなって冗談で言ったらお前が連れてこられたんだよ! 俺全然結婚なんかまだまだって思ってたしまさかあんなにでかい足の女がいるなんて夢にも・・・」
「この馬鹿王子ーーー!!!」
 ハッキリ言って、切れたのは「でかい足の女」の部分である。しかし、そんなことは分からない王子。
「お前の足がでかすぎたんだろ!!!」
 と、今度は逆切れである。しかし、ピンポイントでそこを突いてくるか! と、あたしの怒りは最高潮。
「お前は嫁さんを、そんな訳の分からない基準で決めるのか! ええ!? 何考えてんだ!!」
「だから言っただろ! いないと思って言ったんだよ!! まさかそんな足のでかい女がこの世に存在するなんて・・・」
 がつっっ。あたしは問答無用で王子の顔を殴った。




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