硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 8。

 失礼で、そして弱弱王子。名前はクリスロット。略してリス。そして世間知らずで馬鹿。どうしようもない。
 そのどうしようもない王子。「まさか、本気で捜しに行ってたなんてなぁー」とか、遠い目をして呟いている。左頬は腫れていて、そこには花瓶の水で冷やしたあたしのハンカチを当てていた。
 自業自得だ。そう思いながら、あたしは「ふん」と鼻を鳴らす。
「一番おかしいのはあんたよ」
「人を殴っておいて、お前その態度は何だ」
「殴られるようなことをしたのよ。あんたは」
「何もここまで思いっ切り殴ることはないんじゃないか?」
 そう言って、王子は約五分経過した左頬を見せる。・・・ああ、見事に青あざ。打たれ弱いと思ったが、意外に殴られ強いようである。
「うーん。あんたの背と頬の角度とあたしのテクニックが全てベストだったみたいね」
「さり気なく自分を誉めるな」
 殴られて、頭のねじが数本程度飛んだらしい。最初には考えられなかったほど、汚れになっているリス王子。あたしのお陰だ。うん。
「どうでも良いけど、あたし帰りたいんだけどー」
「俺はどうでも良くない」
 どうすんだ。この痣。とブツブツ呟いているリスに、不本意だがお願いしてみる。
「ねー。帰してよー。あんただってこんなん困るでしょー?」
 すると王子。ムスッとした顔を、こっちに向けて言った。
「俺、しーらね」
 何だ、そのふてくされた態度は。
 ・・・ってか、俺、しーらね?
「・・・は?」
 何? どういうこと? ちょっと? あなた今、何つった?
「人を殴っておいて、助けて貰おうなんて虫が良すぎ」
 そう言い捨てるようなリスの言葉に、聞き間違いかと思った言葉は、どうやら聞こえた通りだったらしいと判明。
「おおおお、おい! ちょっと待て! あんたのせいでここに連れてこられちゃったのよ!? 何よ! 責任取りなさいよ!」
「知るか」
 そう言って、立ち上がるリス。うーん。取り付く島もない。
 ・・・とか、納得している場合じゃないぞ! あたし!!
「待ってよ! ちょっと!」
 慌てて服を掴んで止め、頬を抑えたままのリスに食ってかかった。
「あああ、あんた、自分が何言ってんのか分かってるの!? あたしを追い出さなきゃ、あんたあたしと結婚することになっちゃうんだよ!?」
「さー。それはどうかなぁ? 俺、どうにでも出来るしー」
 焦ったあたしを見て、リスは可笑しそうに笑う。形勢逆転? 認めたくはないが、正にその通りの模様。
 そして彼は、文字通り上から目線で、こう言う。
「精々、苦労して下さいよ。慣れない王城で」
「な・・・っ」
 うわ。こいつの本性見た。




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