硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
9。

 失礼で、そして弱弱王子。名前はクリスロット。略してリス。そして世間知らずで馬鹿。それに、ろくでなし。最低最悪男である。
「おい、待てー!!」
 ぱたんと閉じたドアに、我に返って慌ててドアにひっつくあたし。しかし、素早くそのドアを開けても、もう誰もいない。まるで風が通ったかのようなひゅー・・・という無音があるだけ。いきなり何なんだ。あいつの素早さは。
「・・・こりゃ参ったなぁ・・・」
 本当に参った。出ていくのは簡単そうだけど、ここに来るまでの道(通路)覚えてないよ。迷ったら、誰か助けに来てくれるだろうか?
 しかし、いればいるほど、そこは無音。人の気配なし。故に、救助は求めても無理そうである。と、早々その結論に達した。要するに、行き倒れ覚悟で逃げろということだ。何だ。そのサバイバル。
 がらんとした廊下。広々として、あちらこちらにはちょっと子供が走り回ったら落ちるだろうなと言うバランスで花瓶やら絵やらが置かれている。危ない。
 それにしても広い。何て広さなの? 無意味よ。まあ、あの馬鹿の住まいだから仕方ないか。
「誰が馬鹿ですか」
「ぎゃっ」
 背後からいきなり声を掛けられて、あたしは肩を強張らせた。そして振り返ると、そこにはさっきの爺さん。
「びびび、ビックリしたーっ。何よ。いきなり」
 さっき尻餅付いてたくせに、足音を立てずに近付けるのか。いきなり素早くなったり、色々とおかしいわよ。貴方達。
 と思いつつ、あたしはその爺さんをマジマジと見つめた。いや、しかし彼は使える。頼りになるとか、助かったとか、そう言う感覚ではない。使える。にやり。
「あのー。お願いがあるんですけど」
 しかしそんなことは勿論表面には出さず、あたしは言った。
「はい」
「家に帰りたいんですけど」
「駄目です」
 即答である。さっき「ふぉっふぉっふぉっ」とか笑っていたのなんか、別人じゃないかと言うくらいキッパリ即答である。
「・・・あの、でも、いきなりこんな所に連れてこられても困るんですけど」
「何がですか」
「何が。えっと・・・」
 そう言われると、困ること・・・は、何も無い。今は気ままな一人暮らしだし、ある一身上の都合上、現在仕事もない。・・・あら。誰も困らない。あたしも含めて。
「あの・・・でも困るんですけど」
「貴方は困りません」
「・・・」
 あの・・・ね、そう言う話じゃないんですよ。有るべき所に有るべきモノを配置しろって話なんですよ。
 大体、さ。貴方ね。ここに強引に連れてきた挙げ句「あんた暇人」みたいな言葉はあんまりじゃないですか? あんたに決められることじゃないよ。例え、それが的を射てたとしても。
「それはそうと、何かお困りな事はありませんか? お食事はどうされます? それとも、もう休まれますか?」
「いや、だから・・・」
 今現在、困っているを連発しているのにこの爺さん、何も聞いていない模様。ホント、おかしいよ。どいつもこいつも。
「・・・あの・・・もう、じゃあ・・・寝ます」
 ガックリ項垂れて、あたしは言った。ここで爺さんと話していてもしょうがない。それに今からどうにかしようとしても、どうにもならないだろう。という結論に達して。
 腹を括り、そう言ってしまうと一気に疲れを覚えた。一晩ゆっくり休ませていただいて、明日脱出することにしますかね。




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