硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 3。

 絶対抜け出してやる。当然だろ。冗談じゃない。だからあたしがこんな事をするのは、これまた至極当然のことである。許せ。
「許せるか。アホ」
 あたしの下敷きになっている男・・・基リスは、そう言って立ち上がった。弾みであたしも転がり落ちる。芝生の上。リスの怒りなど、何のその。あー痛かった。と、呟いて手をブラブラさせた。
 さて、何がどうなったかと言いますとですね。こんなアクロバットは、幾らあたしでも初めてでありまして。慣れないことと疲れに参って、上空四メートルほどで疲れて休んでいたら無防備なリスがどうしてか下を通りかかり、あいつの上なら(少なくとも、あたしは)怪我もしないだろうという判断で飛び降りた。・・・てか、丁度手が限界だった。もーいーやー。って感じで、パー。をした。・・・と、いう訳でございます。そして見事命中。ドサ、っと地面にリスは倒れ、あたしは着地成功。万歳。よって今心配なのは、明日筋肉痛にならないかどうかだけである。
「お前、本当に気が狂ってるんじゃないか? 良くまぁ・・・」
 そう言って、リスは三メートルほど地面から離れて揺れているカーテンとシーツの芸術作品を見上げる。
 その顔には僅かな痣があったが、目立たないほどに回復していた。思ったよりもダメージがなかったか、それとも無ければ何かしらの方法を使ったに違いない。こいつは、何と言っても金持ちだから。
「こんな馬鹿なことを」
「あんたよりも気は確かだし、馬鹿でもない」
「お前の悲鳴で、昨日の晩から城内が煩くて仕方ないんだけど」
 昨日なら傷付くなり停止するなりしていた筈の、リス王子。立派な汚れになったようである。
「だったら家に帰してよ! あんただってその方が良いって分かったでしょ!?」
「それは良く分かってる」
「よし」
「でも出来ない」
「何で」
「執事が聞かない」
「・・・執事・・・」
 あの爺さんのこと? と問うと、リスは頷いた。
「あんた、執事に権力牛耳られてるの? なさけなー」
「お前のせいだぞ」
 呆れた顔でそう言ったリスは、大きなため息を付いた。
「靴が無くなったから、他に嫁候補を捜すことは出来ないと言われた」
「・・・」
 あらー。いや、あれはあんたん所の兵が・・・。
「で、でも、あれ、靴じゃない! あと、片割れがあるでしょ!?」
 持ってきたのは右側のみ。そして利き足だから良いケリをお見舞い出来たあたしであった。・・・そんなプチ情報は、今どうでもいいですね。はい。
「無い」
「何で!?」
「執事が蹌踉めいて壊した」
「ふざけんなーーー!!!」
「レイラ様!!!」
 ギョッとして振り返ると、そこにはメイドさんの群。そんなに群れて、貴方達羊ですか!? と言うほど群れて、こっちに向かってきている。
「何故、そんなところにいらっしゃるんですかー!?」
「もー! 勝手に抜け出してー!!」
「良かったな」
 ぽん、とあたしの肩を叩いてリスが言った。
「お迎えが来たぞ」
「いやーーー!!!」
 好き勝手にいじられるのは、もう嫌ーーー!!!
 あたしはリスに抗議するのも忘れて逃げ出した。

 一時間後。捕獲されたあたしは、リスに恨めしい視線を向けたが、リスは肩を竦めて知らんぷり。くそっ。覚えてろよ!!!!




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