硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 7。

 絶対抜け出してやる。当然だろ。冗談じゃない。だからあたしがこんな事をするのは、これまた至極当然のことである。許せ。再び・・・の再び、脱出しようとも。
 ちなみに二回目の脱出は誰も知らない内に失敗と相成りました。しかーし! ここに来て成功に一歩前進! ・・・したみたいだけど、どうなるあたし? これってピンチ!?
 しかし彼女の爪先は方向を変え、見えなくなり、やがてまるで何かを捜しているかの様にガタン、バタン、と音をさせて何か作業を始めた。
「?」
 どうやらこっちは見ていない模様。そう思い、こっそりと部屋に首を突っ込んで様子を伺ってみた。見えた薄黄色の制服。白いエプロンのリボン。昨夜今日と、嫌な思い出しか無いあの制服は、間違いなくメイドさんのもの。
 彼女はあたしに背を向け、腰を深く折っていて顔も髪型も分からない。
 しかし作業中の彼女の人差し指に、金の指輪がチラリと光ったのが分かった。あら、高そう。ここは従業員でもそんなリングを買えるほど、お給料が良いのかしら。と、職場のリサーチを始めるあたし。ええ。今無職ですから、そろそろ働かないとは思ってまして。・・・ま。どんなに給料が良くたって、最早ここで働けるはずがありませんけど。
 そう思っていたら彼女は折っていた腰に手を当て、大きなため息を付く。やばっと思い、慌てて陰に隠れた。多分、彼女は体を起こしただろう。もう一度、大きなため息。お疲れ様です。と、心の中で労う脱走囚(まだ未遂)。
 と、今度は彼女、自分が入ってきたのとは違う、もう一つのドアを開いた。空気が動いた感触。
 風だ。・・・ということは外である。
 ・・・外ー!?
 あっちのドアか。と、さっき左側の壁にあったドアに狙いを定める。あとは彼女が出ていくのを待つだけ。あたしは指を組み、神に祈った。どうか。どうか彼女がこっちには来ないで向こうに帰ってくれますようにーっ。ってね。



 その後。
 願いが通じ、彼女が元のドアの向こうに姿を消し、いなくなったそこに再び下りたあたし。しめしめ。これで出られるぞ。そう思い、手に掛けたドア。・・・ガチャ。
「あら?」
 ・・・ガチャガチャ。
 鍵が掛かってやんの。マジですか。あたしの常識から言えば、家の中からは鍵いらず。しかしその手動でどうにかなる鍵もありませんで。あるのは、うんともすんとも言わない鍵穴のみ。うおー! やっとここまで来たというのに!!!
 そう思っていたら、また室内を繋ぐドアの方から物音が。
 もういやーーー!!! と思いながら、あたしはまた階段に戻った。




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