硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 4。

 神様は、弱き清き者の味方である。しかし、試練もお与えになる厳しいお方であるらしい。それに動揺している人間を見て、神様頭を抱えているのか、それとも笑っているのか。
 笑ってるんだと思うなぁ。そしてたまにはドキドキハラハラ・・・してるかも?
「今日、外から客が来る予定は無い」
 良いから黙れ! と、あたしの口を塞いで、リスはそう言った。
「誰かが外から入ってきたとすれば、それは招かざる客だ」
「・・・」
 はい?
 訳が分からなくて、思わず首を傾げたあたし。
 招かざる客? ・・・ええと、それは正に、あたしのことでは?
 と言いかけたが、そんなどうでも良い話をしている場合ではない模様。
「そのまま野放しにしておくわけにはいかない」
 あたしが大人しくなったのを察して、リスはあたしの手を引いて再び歩き始めた。
「本当はメイドを捜して話を聞くのが早いんだが、そんなことをしている時間が惜しい。直接捜しに行く」
「ちょ、直接って?」
 伝わってきた緊張感に空腹が吹っ飛んだ。そして厳しい表情のリスを見上げ、問いかける。
「一番危険度の高い場所から潰していく」
 リスは前を向いたまま、応えた。
「中央の入口を使ってきたことを考えても、多分その男は城の中枢まで来るだろう。最悪、王族か要人のエリアまで。しかし、特定のエリアを歩き回るのに使用人に化けるのはリスクが高すぎる。数人滞在している主要人物は把握しているし、それ以前に顔も知っているからこれも駄目だ。だから・・・化けるとしたら・・・」
 リスは整理しながら話してているのか、時々言葉を切ってあたしに言う。
「その付き人が、一番可能性が高い」
 しかし最後のこの言葉は、全くその正を疑っていないかのような強い口調。
「人数は一人に付き四、五人。けれど話し合いの場に姿を現していない者も多い。俺もそこまでは把握出来ていない。相手の目当てが城であろうと来客であろうと、まずそこから調べるのが最優先だろうな」
 一番、隙がある場所。そして何かがあった場合、被害の危険性も一番高い場所。それが、そこだということなのだろう。彼は、そこを調べるというのだ。そ、それは話としては分かった、けど。
「待って、よ。ここの来客って、そんな大っぴらに知れ渡ってるの? そんな情報、簡単に手に入れられるモノなの?」
 国単位の被害が出るであろう権力を保持している、要人。そこを攻められたら、確かに危険度は高いだろう。そして、それを狙うなら危険を犯す価値もあると言うことは良く分かる。
 しかし、それだけにガードも堅いはず。情報だって簡単には漏れないだろう。そんなに確信して良いものなのか、あたしには分からない。だからこそ不安だった。そして他にも穴はないのかと、彼を疑うようにあたしはそう問う。
「メイドと繋がっているなら出来る」
 しかしそのリスの返事は、明確かつ説得力の固まり。がーん。そ、そうか。そうだったね。自分で目撃したのに、そんなことも忘れていた自分が迂闊。
「な、何でそんな人が入って来てるの?」
 だとしたら相手は、ただの軽犯罪者に留まらない。急に恐怖感を覚えて、リスの手を強く握る。
「知るか」
 そんな素っ気ない返事をしながらも、あたしの手に気付いたのか、リスはあたしに振り返った。
「とにかく、大事にならない内に処理する。手伝え」
「てつっ!?」
 何をですか? てか、貴方どうする気なんですか? そいつが目の前に現れたとして、貴方どうにか出来るんですかー!? 物凄く頼りないんですけど!!!
「むむむ、無理だよ!」
「無理じゃない」
 何なの、その自信は。あんた、もしかして自分が命令すれば誰でも何でも言うこと聞くと思ってるの? それとも何!? そいつがいたら、あたしに取り押さえさせるつもり!? 勘弁してくれー!!!
「おい」
「無理! 無理無理! てか、やだ!!」
「いいか。良く聞けよ」
 冗談のように首を振っていたあたしの肩を掴み、それを止めるとリスは真剣な声で言う。
「これは非公式な事だが、明日、隣国の王がお二方いらっしゃる。今日既に滞在している客の内の二人は、その王の側近だ」
「・・・王?」
 何それ。
 リスの声と言葉の重大さに、あたしは固まった。止まったのではなく、文字通り固まってしまった。
 隣国の・・・? 東と西の王って、事?
「明日までに解決出来なかったら、その結果、何か事件が起きたら」
 リスはあたしに言い聞かせるように、叩き込むように、言う。間近に覗くその目には、見たこともない光があって。
 あたしはそれに、きっと酔ってしまったんだろう。酔いは人間を、不感症にする。
「戦争が起きる可能性すら、ある」
 戦争。しかし、その言葉の重要性よりも。
 あたしは「それ」に囚われ。
「それは絶対に避けなければならない」
 恐怖を感じても、憤りを感じても良いのに。全てを素通りして。ただ、ただ。
「だから協力しろ。この国の為に」
 感じたのは、意味の分からない熱だけ。
 まるで眩暈を覚えるような、熱。




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