硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 2。

 ねぇ、神様。今、あたしを見てる? ・・・どんな気分? 笑ってるの? それとも、ドキドキ? ハラハラ? あたし? あたしは、もう疲労困憊です。
「失礼致しました・・・」
 まずは一人目の訪問を終え、ドアが閉まった。・・・その瞬間。
「はぁーーーー・・・」
 とため息を付きながら、思わずしゃがみ込んだあたしと、
「ひー・・・」
 と、壁に手を付いて肩を落としているリス。何はなくとも、疲労感だけは甲乙付けがたいほど良く滲み出ている。そんな共通の気持ちを抱いたのは、多分この時が初めてだったろう。運命共同体とは、正にこのことなり。そんな共同体はいらんけどねぇー・・・。
「い、いたか? あの中に」
 リスが引き続き、壁にもたれながら言った。
「ううん・・・」
 チラリと向けられた視線に向かって、あたしは首を横に振る。それを見て、リスは大きなため息。多分、色々な感情を込めたため息。しかしそれも仕方がないと思い直したのか、小さな声で「そうか・・・」と呟いた。
 その諦めを、あたしはぶち壊す。
「違う。いなかったって事じゃない」
「え?」
「分からなかった」
「・・・」
 リス、沈黙。あんなリスクまで犯して? 分からなかった? 予想通り、その絶望感がリスの顔を曇らせる。青ざめていると言っても良い。
「しょうがないでしょ」
 そんなことで責められたくない。あたしは善意の協力者なんだから。と、開き直ったあたしに、リスは恐る恐ると言った口調でこう言う。
「聞き忘れていたけどお前、相手について分かることはあるのか?」
「え? えっとーー・・・」
 そう言われると・・・ああ、無いわ。何にもない。
 ぶんぶん、と首を元気に横に振ったあたしを見て、リスの顔色は黒になる。ああ、凄い青ざめよう。
「なんてこった・・・」
 ガックリ。元々項垂れていたリスは、端で見ていたあたしが、首が落ちるんじゃないだろうか? と心配するほど更に深く項垂れた。そしてやがて「考えてみれば、主人の所には居ないだろうなぁ」とも呟く。そうだね。向こうは向こうで顔見知りだもんね。あの中に入り込める訳、ないよね。もし来客が一枚噛んでいたとしたら、この方法じゃ絶対分からないわけで。あーあ。調べようがないや。困ったね。駄目だ、こりゃ。無駄足無駄足。
 と、空腹・・・じゃなかった、そうじゃなかった。ええと、あくまでも「疲れのせい」で緊張感も持続しなかったあたしは、早くも諦めモード。あたしには何も出来ませーん。そう言って万歳しようとする。これぞ正にお手上げ。なんちゃって。
 しかし不意に気付いた、近付いてくる足音。床に映った、影。あたしは上げかけた手を慌てて下げる。誰か、来た。
 そして、声。
「王子。どうかなさいましたか?」
「!」
「!!」
 二人。同時に見上げて慌てて立ち直ると、横に並んで相手を見た。




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