硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 3。

 ねぇ、神様。今、あたしを見てる? ・・・どんな気分? 笑ってるの? それとも、ドキドキ? ハラハラ? あたし? あたしはもう疲労困憊です。でも、頑張る。
 そんな、決意を新たにしたあたしの前。男二人は言葉を交わす。東の要人について。
 彼の名前は長くて、一度聞いただけじゃ覚えられなかった。お爺ちゃんは覚えているのかな? 自分の名前。そう思いながら聞いていた。
「それはそうと・・・」
 彼は、気付いたようにあたしを見る。あたしは思わず会釈した。さっき即興で教えて貰ったマナーが、少しは身に付いた模様。伏し目がちな優雅な会釈は、彼の油断を誘ったらしい。彼も笑顔で会釈をしてくれる。
 その腕には、さっき要人の後ろに控えていた男達と同じマークの腕章。一目見ただけで、要人の付き人だと分かっただろう。リスは。
 あたしは彼が向き直って、初めてそれに気付いた。ああ、さっき見たのと同じ。と思う。
「こちらの可愛いお方は?」
「・・・ああ・・・その・・・」
 リスは、その問いに複雑な表情を浮かべる。ここで、さっきの無意味な駆け引きをするかどうか迷っているようだ。どうせ知られるだろうけど、面倒臭い。そんな感情が明らかに浮かんでいる。ま、被害妄想を加えるなら「可愛い?」と、思ったのかも知れないけどね! ・・・・・・うん。まあ、被害妄想が出て来るくらいだから、人並みだって自分で分かってるわよ。くそっ。
 ああ、一人で勝手に腹が立った。そう思いながら、リスの腕を抱いた。
「初めまして。私、王子の恋人のレイラと申します」
「げ」
 引きつった顔で、リスはそう呟いた。だからな。お前、正直すぎるそれらの反応はとっても失礼だぞ。気を付けろ。
 そう思いながら、あたしは甘えるように引っ張って彼を一歩後ずらせる。そして僅かな安全を得てから、指を差して言った。
「入ってきたの。この人」と。




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