硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 4。

 ねぇ、神様。今、あたしを見てる? ・・・どんな気分? 笑ってるの? それとも、ドキドキ? ハラハラ? あたし? あたしはもう疲労困憊です。でも、頑張る。佳境ですから。
「え?」
 リスがその言葉に素早く反応して、あたしから目を逸らし男に向き直る。
 そのリスとあたしに対面した男は、あたしの指を目を丸くして見ていたが、やがて可笑しそうに笑った。
「どうか、されました?」
 人なつっこい笑顔。その顔を、もし一番最初に見ていたらあたしは迷ったかもしれない。自分の視覚に騙されたかも知れない。身分を表す、分かりやすい証も含めて。
 でも、間違いない。間違いないはず。彼はあたしの唯一の記憶に、強い刺激を与えたのだから。他の五感に頼らずに、「あの時」と同じ状態で聞いたのだから。
「あたし、聞いてたの。声、覚えてる」
 そしてリスに説明する為の言葉は、油断が出来なくて男を見ながら告げることになった。
「君に、忠誠を」
 そう言った瞬間。
 男の顔が、歪んだ。一瞬で、まるで別人になった。人間が悪魔に変わる瞬間のような、目が釘付けになるほどの急速な激変。
 その言葉は多分、この場で問題を起こすも厭わないほどの急所だったのだろう。もしくは全て明るみに出てしまった以上、しらを切るのも無理だと踏んだのかも知れない。
 そして彼が躊躇いもなく左腰の剣に手を付けるのを、あたしは目を丸くして見ているしか出来ない。余りに驚いて、恐怖を感じることすら出来ぬまま。
 そのあたしの腕を、リスは強引に剥がした。そして、自分の背後に押すように庇う。
 ・・・庇う? いや、これって腕を振り払ったって言った方が早いよ。もっと優しくして下さい!
「わっ」
 蹌踉けて転びそうになり、視線が逸れ。
 何よ! この野郎!
 ・・・という気持ち満載で立ち直った時には、全てが終わっていた。ごんっっ。・・・どさっ。そんな音が聞こえ、視線を戻した先にはのびた男。あららー。と、リスを怒るのも忘れて、あたしは目を丸くする。
「・・・よわ」
 その彼の傍らで、剣を手にしたリスは呆れたように呟いた。
 それを見て、あたしは思う。あ、腰から下げてたそれって飾りじゃなかったんだ。へぇー。と。




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