硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 4。

 神様。これ、神様の仕業? だとしたら神様、相当悪趣味だ。何故こんな馬鹿ばかりお作りになったんですか? もしかして、その中にキラリと光るものを見る為、とか?
「やり方が汚いわよ!! 何よーーーっっ!!!」
 自分の悲鳴のせいで駆けつけてきた兵に押さえつけられ、お縄頂戴しながら彼女はじたばたしている。物凄い暴れっぷり。網に掛かった魚みたいだ。
 一方あたしはダラダラ出血をし続けるのに一生懸命な傷口と格闘中。それを手で押さえながら頭を掻いた。
「いやー・・・まさか、あんなアホ行動に出るとは思いませんで・・・」
「アホって言うなーーーー!!」
 じたばたじたばた。決してスタミナとか力がありそうではない彼女。それなのに体を肩から足先までぐるぐる巻きにされて芋虫状態になっても、ひたすらじたばたしている。あっという間にくたばった男が情けないほどに物凄い暴れっぷり。これぞ火事場の糞力。きっと彼女みたいな人間が、燃えている家からへそくりすらしっかり持って一番に飛び出して来るに違いない。
「触るな! すけべーーーー!!! セクハラで訴えるわよーー!!!!!??」
 叫ぶ言葉も見事である。一瞬、兵が顔を見合わせるほどに迫力満点である。
 しかし当然為す術もなく、やがて彼女、元に戻れるのかしら。と思うほどに絶好調な発狂しながら、さっさと兵に担がれていった。「馬鹿野郎ーーー! 降ろせーーーー!!」そんな叫び声が、段々遠くなっていく。
 そして段々聞こえなくなっていく。しつこいほどに聞こえているが、明らかに遠ざかっていく。
 ・・・遠ざかっていく・・・。
「・・・」
 ・・・ぽつん。
 そして、そこに残ったは血だらけの庶民。つまり、あたし。呆然。と、それを見送った。「達者でなぁー」そんな言葉すら、喉から出かかる。それ程までに彼女の暴れっぷりは称賛に値するほど素晴らしく、そして悲壮感ゼロでした。敵ながら天晴れとは正にこのことなり。いっそ清々しかったです。お疲れ様でした。お前の生き様は見届けたぞ。と、思わず敬礼。
 そのあたしの肩を、不意に掴んだ手の感触。「何?」と、言う間もなく、その手に九十度ほど回転させられた。そして向かい合ったリスは、凄い怖い顔をしてあたしを睨む。・・・何故にあたし、睨まれなければならぬのですか。
「・・・はい?」
 しかし言葉は空腹と、多分貧血故のクラクラに、すぐには出てこなくて。ひたすらポカンとリスを見上げていたあたし。
「見せてみろ」
 そのあたしに、リスは怒った顔のまま言った。あたしの左手を掴み、血だらけの手を下ろす。うおー。鉄の匂いがする。手が真っ赤。気持ちわるーっ。
 しかし躊躇うこともなくそのあたしの首元に顔を近付け、傷を見てリスは呟く。「何て事を」と。ホントにね。・・・って、何が?
 そう思っていたあたしをいきなり抱き上げ、リスは叫んだ。
「大至急医者を連れてこい!!」
「ひえっ」
 ななな、何よ、下ろしてよ! そういう気持ちで、思わずジタバタ。
 ・・・したら物凄い剣幕で怒られた。
「大人しくしてろ!!」
 はい。すいませんでした。




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