硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 8、これって、あれだ。・・・初体験。

「初めて」は、何の為にあるのだろう。ドキドキする為?
「レイラ様! 何をなさっているんですか!!!!!」
 あたしはベッドの上から、向かって右側にある窓を見ていた。
 ・・・だけだ。あたしの脱出劇に使用された為(未遂)新しくされたレースのカーテンは純白。フワフワと風もないのに揺れている気がする。その向こうは見えないけれど、その白は見ていて飽きなかった。
 ・・・から見ていた。
 ら、怒られた。
「はっ」
 慌てて反対側。ドアの方を向く。そこには、お茶のセットを持ったメイドさんが立っていた。
 そして彼女は目が合うと、あたしを遠慮なく指さして怒鳴る。
「ああああぁ! 駄目ですこっちを向いては!!!」
「はいっ。すいませんでしたっ」
 やべぇ! ばれた!! なんて思いつつ、ハキハキ返事をするあたし。そしてキビキビと正面を向くあたし。・・・しかし。
 疲れた。何もしないことに疲れた。あたしに自由をー。と思う。肩は一瞬でがくんと下がり、視界にはついさっきまで正味一時間ほど見ていた正面の壁、再び。つまんねぇ風景。いや、どこを見ても豪華なんだけどさ。でもさ。
 見飽きた。・・・もう、ホント飽きたのよ。まあ、心底心配されているということが分かるので、それに大人しく従おうとは思うけれど。・・・それにしても疲れるの。飽きたのーーーっ。
 二時間ほど前、一夜を過ごした部屋に担ぎ込まれたあたしは(ピンピンしていたが)後を追いかけるようにして入ってきたお医者さんに治療を受けた。出血の割に痛みも少なく、医者も「これなら跡も残らないでしょう」と言っていた。・・・が。
 本当に医者なのか。と、疑いたくなるほど消毒液やら精製水を使いまくり、これでもかと消毒された。あたしの中の細胞が死にそうな勢いだった。実際、大丈夫か? あたし、の細胞。死んでないよな? ドキドキ。
 その上、「あのー」と言えば「動かないで下さい!」と言われ、疲れてため息を付けば「息は静かに!」と怒られる。どうしてそこまで。と言うくらいに一生懸命なお医者さんであった。いい加減な治療をされるよりはましだが、どうにもこうにも神経質すぎる。怪我した本人は「腹減ったよぅー」とか思っていたのに。
 そして最後、薬を染み込ませたガーゼを当て、包帯でぐるぐる巻きにしてから、白衣のお兄さんのお仕事終了。・・・うん。さすがだ。苦しくはない。でも、こんなにするほどの怪我なのか。と、本人であるあたしが思う。そして、もうどうでも良いから何か食い物くれ。とも思った。
 そのあたしに。
 そしてここからが重要だが、そこにいたメイドさんにも聞こえるように。彼は加えて、とんでも無いことを言い残していった。
「出来るだけ、横を向いたりしないで下さいね。傷が開きますから」
 そんな一言のせいでこれだ。
「もう! ちゃんとして下さらないんだったらベッドに頭を縛り付けますよ!?」
「・・・」
 それが怪我人に対する看護なのか。やっぱりここは超非常識人の巣窟だ。改めて、とんでもないところに来てしまった。どうしてくれよう。くそぅ・・・。
「大変そうだな」
 ブツブツ呟いていたら、そんな言葉と小さな笑い声が聞こえてきた。いい加減、聞き慣れた男の声。
「あれ?」
 声に呼ばれて振り向くと、そこにはやっぱりリス。「どうしたの?」と、言いかけたあたし。
 ・・・に、リスとの間にいるメイドさんがまた唸った。
「レイラ様!!!」
「ごめんなさいーっ」
 ひーっ。誰かどうにかしてくれーっ。




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