硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 3。

「初めて」は、何の為にあるのだろう。ドキドキする為? 驚く為? 人を、成長させる為、とか?
 それから一週間ほど、あたしは拷問に等しい日々を送ることになった。
「動くな」
「動くな!」
「動くなって言ってるでしょうがー!!」
 挨拶よりも多くぶつけられる、この言葉。本当に窮屈で窮屈で。とにかく窮屈でーっ。

「はぁーぁぁぁぁ・・・」
 大きなため息を付く、部屋の片隅。束の間の独りぼっち。つまり、ささやかな自由時間。
 しかしベッド上、何もすることがない暇という名の自由時間。あー。窮屈ーっっ。全治一ヶ月って、マジですか? あたし、傷が消える前に精神的に参ってしまうかも。どうにかして細胞分裂加速しないかなぁー。と、しみじみ思う今日この頃。
「むーっ」
 しかし逆らっても良いことないし、やっぱり心配されているのに悪いとは第一に思うので、あたしはベッドから降りようとはしなかった。膝を抱え込み、小さくなって唸るのが関の山。随分あたしも丸くなったもんだよ。・・・いや、丸まっているって意味じゃないよ? なんて・・・自分で言ってて何ですが、つまらないボケ突っ込みだ。やっぱり体がなまってるんだなぁと思う。
 リス? ・・・ああ、会って、ないよ。あたしにはハッキリしない話だけど、翌日にいらした隣国の王達と会談でもしているのだろうと、勝手にそう思っている。考えても分からないし、第一あたしにとってはどうでも良い話。
 それに今は、もっともっと頭から離れない厄介な悩みがあって・・・。
「・・・うーむ」
 悩んでいれば時間が過ぎていく、頭から離れない考え事があって・・・。うーむ・・・。
 あたしはも一つ唸って膝を抱え直してから、最早日課といっても過言でもない程に考えている「あれ」を、今日も考え始めた。頭から離れない、あの記憶。
 多分、だからこそ、ここで大人しくしていられるんだろうと思う。でなきゃ、廃人化しているか発狂しているかどちらかに違いない。それ程にあたしを夢中に悩ませる、厄介な問題が一つ。考えていると時間があっと言う間に過ぎていく、ある意味便利な問題一つ。
 ・・・あれは、何だったんだろうなぁー・・・。と、一週間経った今も思う。包帯で巻かれた首に、与えられた僅かな感触。そして離れたリスを呆然と見上げたら、彼は口の端を持ち上げた。今・・・。
 何したの? と言い掛けたあたしの耳に、メイドさんの怒鳴り声。
「レイラ様ーーっ!!」
「ごめんなさいすいませんお許しをーっ」

 ・・・そこで記憶はストップ。強制終了。聞こえるのは「きぃー!」というメイドさんの発狂とあたしの謝罪のエコー。・・・だけ。
 よって答は出ず。出ないからこそ、厄介で便利な問題。
「・・・ううう・・・やっぱりだ」
 そんなところで記憶は終わってる。思い出しても思い出してもドキドキしてもハラハラしても、締めはメイドさんの怒鳴り声。・・・あああぁぁ。勘弁して下さいよぅ。




戻る 目次 次へ
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。