硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 2。

 おまじない。そう言えば、全てが済んでしまう気がする。それで済むなら良いけど。
 ・・・済む訳無いだろ。
 毎日二回。お医者さんは、あたしの元に来る。そんなに来なくても、ええんじゃないでしょうか? というくらい、まめに通ってきてくれる。
 怪我をしてから十八日目。包帯とガーゼを外し、傷を診たお医者さんはこう言った。
「綺麗に治ってきていますね。もう皮膚も出来ているし。そろそろ包帯はいらないでしょう」
「・・・えっっっ???」
 ぎょっっっ。として、あたしはニコニコ笑っている医者に聞き返した。
「ほほほ、包帯いらないって、じゃ、これ、あっぴろげですか!?」
「・・・あっぴろげ・・・?」
 お上品な人ばかりを診ていたお医者さんは、自身もお上品になっているらしい。その言葉に首を傾げてから、ガーゼを手に言う。
「ガーゼを当ててテープで固定しておきますよ。空気も通るし、その方が良いでしょう」
「・・・とお・・・」
 空気だけじゃなく感触も通ってきたら、どうすんだお前!!!
 と、言いかけて止めた。こんな事説明出来るはずが無い!!! うわぁー! ど・・・どうしようー! 何て言えば良いんだ!? どうしたら良いんだー!??
 しかしナイスなアイディアは一っつも出てこず。ますます混乱。そして茫然自失。
 そんなあたしに医者はペタリペタリと、テープでガーゼの貼付けを完了。ちゃかちゃかと片付けも終え、立ち上がって真っ白い顔をしていた(であろう)あたしに言った。
「じゃ、お大事に」
「へ?」
 我に返り、気が付いたら彼はドアの向こう側。「げっ。ちょ、ちょっと待って」と言いかけるも、最初の一言を言う前にドアは閉められた。パタン。その風圧が、傷を撫でる。冷やっ。
「ぎゃ・・・っ!」
 そして一人の部屋に零れ落ちた悲鳴。真っ赤と真っ青の中間の顔色になるあたし。
 ひぃーっ。こんなに変わるなんて! やめてぇー! と頭を抱えた。包帯くらいケチるなーー! と思う。そんなことをする筈がないのに思う。
 れれれ、冷静になれあたし!!! 大丈夫だ! 会わないと言う方法もある! だだだ、大体、今までだって頻繁に会っていたわけじゃないじゃないか!! そうだろ!! むむむ、むしろあたしがここからででで、出なきゃ会わなくて済む。済むだろ。そうだろ!?
 ・・・と、自分に言い聞かせても、かえって意識して頭から離れなくなるだけ、だった。脳味噌沸騰しそう。いやーっ!
 その日のあたし。そりゃもう動揺も興奮も混乱もしてましたから。ずっと、してましたから。
 だから出来ることと言えば、頼まれてもいないのに必要もないのにベッドに蹲って頬を染め、ふるふる震えることだけ。でした。



 そんなことを思い何時間、何日過ごしただろう。我ながら、こんなことが良く持続するものだと思った。おかしいとも思った。変だとも思った。過剰反応だとも思った。むしろ、平常心を保つために、そう言い聞かせた。無理矢理、そう思いこもうともした。
 でも、駄目だった。出来なかった。どうしようもなかった。どうにかして。どうにかしてどうにかしよう。と考えても考えても解決策も出てこない。考えれば考えるほど頬が染まっていくという笑っちゃいそうな状態が、いつまでもいつまでも継続。そして、いい加減、部屋に閉じこもっているのも限界。窮屈ったらない。限界ーーー!! うおー! と布団をはねのけた。・・・末。
 もう駄目だ。なるようになれーー!! と、最後は開き直った。そして部屋に一人、鼻息荒いあたしが誕生。
 それを神様、聞いていたのか。そうか。準備は良いんだね。オッケーだね。みたいな感じで。
 直後に「その時」は訪れた。




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