硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 2。

 答など、分かり切っている。ただそれを胸に、その道に進めるかどうかは別問題。そして、進もうとする人間とそれを阻止する人間がいるというのは、珍しい話じゃないわけでして。
「ねぇ。お願い」
 あたしは手を合わせ、門番に笑顔でそう言った。昨日来るはずだった、裏門の前。もっと悲壮感漂わせてくるはずの場所だったここに、あたしは勢いという波に身を任せ「行くぞ、おらー!」という気持ちで来てしまった。良いのかこれで。そうは思ってもしょうがない。とにかく外に出ねば。
「・・・でも・・・」
「ちょっとだけ。ちょーーーっとだけで良いから」
 そこ、通して。と、あたしはハッキリは言わないが指を差して自己主張。
「・・・まずくないですか?」
「大丈夫。ぜんっぜん、まずくないです」
 むしろね。今の方がおかしいって気付きましょうよ。貴方もいい加減。
「・・・何をしに行かれるんですかー」
 ごねるようにそう言って、門番は槍を抱くように腕を組んだ。近寄りがたい人種だと思っていたが、なかなかどうして話が通じるものである。
「ちょっとだけー。ちょっと・・・外を覗いてみたいだけ」
 だから門から顔を覗かさせて。と、あたしは可愛くお願いしてみる。そしてそれが叶ったが最後、勿論あたしはそこから飛び出し、ネズミの如く逃げ回る気であった。捕まえられるもんなら捕まえてみろー! ・・・くらいの意識である。何でも良い。外に出た者勝ちだ。そして後一押しで、その勝利はあたしの前に舞い落ちる。せーのっ。おいしょーっ。
「・・・でもー・・・」
「ほんと、それだけー」
「・・・いや、やっぱりまずいですよ・・・」
「まずくないよー。全然まずくないよー」
 門番は気まずそうに視線を逸らす。遠くの方へ。そして問うた。
「・・・まずいですよね?」と。
「へ?」
「分かり切ったことを聞くな」
 あたしの後ろから、答えが返ってきた。そして頭をがっしりと捕獲される。いたっっ。
「この期に及んで、なーにをしてるのかな? お前は」
 あわわわ。振り返ると、そこには・・・ええ、予想通りのお方がいらっしゃいまして。
「うぎゃっ」
「変な悲鳴を上げるな。・・・おい。分かってるとは思うけど」
 リスは門番に向かう。門番はと言えばかっちりと槍を立て、その言葉を物凄い真面目な顔をして聞いていた。何だ、お前。いきなりそんな顔するなー!!
「以後、こいつが変なことを言ってきても真に受けるなよ」
 やめてぇー。あたしの発見した唯一の脱出ルートなのにーっ。
「はいっ」
 はいっ、じゃねーだろーっ。しかしガシャーン! と、硬く重い門が閉じる心の絶望音を、あたしは確かに聞いた気がしまして。・・・駄目だ。ここからの脱出は半永久的に無理だー。と知る。
 じたばたじたばた。それならば、やることは一つ。どうにかしてこの場から逃げよう!
 ・・・とするあたしの頭を掴んだまま、リスは言った。
「良い度胸しているな。お前」
「なななな、何のことでございましょう!?」
「こんなことしたらどうなるか、分かってると思ったんだけどなぁ」
 そう呟いたリスの声の後。あたしはすっかり忘れてしまっていた、その恐怖を聞いた。
「レイラ様!」
「え?」
「いたー!」
「レイラ様、何故そんな所にーーー!!!???」
 物凄い怒りのオーラを乗せたメイドさん達の声と足音。「ぎょっっ」ってしました。思わず。はい。
「ほら。良かったな。またお迎えが来たぞ」
「うわわわわっ」
 まずい。このまま捕獲されたら美味しいご飯を食べさせられ、綺麗な服に着替えさせられ、これでもかと丁寧に髪を結われてしまう!!
「いやーっ」
 リスが(多分物見意識で)手を離した。そしてあたしは逃げ出す。完全に不利な鬼ごっこの開始。
 そして捕まってから気付くのだ。逃げた分だけ、彼女達と過ごす時間が多くなることを。




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