硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 13、価値観。それは人を形成する大きな物だから。なかなか変えられないのが難しいところ。

 価値観の違いってヤツはね。結構厄介なものだと思うの。でもね、その厄介を感じているのは、お互いだからしょうがない。
 むすっ。その日の昼下がり。あたしはケーキとお茶を前に。
 そしてリスを前に、ふてくされていた。ちなみにここは、あたしが「お借り」している部屋。一ヶ月以上もいるといい加減慣れてくるが、その意識はちゃんと持っている。
 そして、つまり脱走失敗して再び放り込まれてしまった部屋。さっきの御挨拶は何だったんだ。二度と戻ってこないつもりだったのに。ブツブツ。
 さて。三時のお茶の時間。それに合わせて来たらしいリス。こんなことは初めてだ。なので今朝の逃走劇のお叱りでも受けるのかと思い、あたしは逆切れして、ふてくされているというわけ。
 リスはそのほっぺたを見て感心したのか呆れたのか、目を丸くして指を差す。
「口の中に何か詰めてるのか?」
「詰めてないよ!」
 そんなに膨らんでないよ! と、言ってから、あたしは再びこれでもかと頬を膨らませた。・・・うん。やっぱ膨らんでるな。相当。
 そのあたしのほっぺたに向かって再び、リスはため息混じりに言う。
「・・・子供みたいに、ふてくされるなって」
 子供。・・・子供?
 子供だとー!? カチン。あんたは、あたしを子供だというのか!? 誰よりもまともな、このあたしをー!!
「あんたは変だと思わないの!?」
 我慢限界。あたしは叫んだ。どうなのよ!? この状況! あんたの前に、あたしが何故いる!? 怪我も治った今、こんなにおかしな事はないでしょー!?
 その質問に、リスは大きく頷く。
「思う」
「お」
 おお。分かってるじゃないか。お前もまだまだ捨てたもんじゃないな。と、あたしも頷いた。
「でしょ!?」
「ずっと思ってたよ」
「あたしも!」
「お前、変なヤツだなって」
「あんたに言われたくないわー!!」
 これが純正の我が家だったら、あたしは机をひっくり返していただろう。しかし、しかし。である。我が物のように使っているとはいえ、ここは他人様のお家である。・・・よって、出来ません。そんなこと。くそーっ。ぎりぎりぎり。歯軋りしてみても、事態は何も変わらず。また一から出直しか。どうにかして脱出ルートを見付けねば。今朝の騒ぎも何のその。リスを目の前に、未だそんなことを考えているあたし。
 そのあたしを見て。しかし興味を失ったか、リスは椅子にふんぞり返って足を組むと自分の用事を言った。
「ところで・・・あのさ。ちょっと頼みたい仕事が有るんだけど」
 はた。と、あたしは止まる。仕事? 無職のあたしに「お仕事」? そそそ、それは魅力的なお話だ。ここでたんまり稼げれば、ここを出てから、しばらくは金銭の心配が要らないかも。と、未だ逃げ出す気満々のあたし。
「ななな。何かな?」
 あたしは努めて冷静にそう言おうとしたが、声が震えた。
 そのあたしを見て、不思議そうに首を傾げたリスは呟く。
「? お前、やっぱ変だよ」と。




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