硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 2。

 価値観の違いってヤツはね。結構厄介なものだと思うの。それを許し、それを下げ、もしくは上げ、摺り合わせ。努力の果てに、揃うこともままある。きっとある。
 ・・・多分ある。・・・あると・・・いいな。
 ・・・あるかぁ?


 お仕事の話を聞いて。
「・・・」
 いや。聞いている間から、あたしの頭はこんがらがっていた。呆れていたと言っても良い。とにかく、信じられないことに脱力あるのみ。手足ブラーン、である。
 そして結果、出てきたのは以下の言葉。 
「あんた正気ですか?」
 これが庶民発、王子様行きの言葉。
 よくよく考えると、あり得ない言葉である。しかし最早、二人とも違和感を感じることすらない。よって、ただ単にその言葉遣いに呆れたらしいリスは、小さなため息を付いてからハッキリとこう言った。
「お前よりは大分まともだと思う」
「・・・あ、そう?」
 マジか。マジなのか。お前。
 これが庶民発、王子様行きの心の声。あり得ないとか違和感とか、そういうことはどうでも良くなった庶民の心の声である。そもそも、初対面で王子を殴った庶民。考えてみれば、今更こんなこと気にするはずがなかった。
 ・・・さて。その返事を聞いて、あたしは遠くを見つめた。そして両親には申し訳ないが、天国にいるであろうお婆ちゃんに問いかける。お婆ちゃん。どう思う? おかしいよね? こいつ絶対、おかしいよね。と。
 ・・・うーむ。
「絶対に異常ではあるけれどもし仮に万が一自分をまともだと思うなら、あんたにとってまともじゃない一般的には至極正常であるはずのあたしに、そんなことを頼むのはおかしいとは思いませんか?」
 貶しつつ、自分を持ち上げつつ。言っている自分がこんがらがりそうだったが、リスはちゃんと聞き取った模様。「いいえ」と、首を振った。それは優雅でかつ、確かな返事。
 対してその返答に、もう返す言葉もないあたし。おいおいおい。どうなってるんだろう。マジだ。こいつマジだよ。と、肩を竦めるのが精一杯。マジでおかしいよ。と思いながら遠くを見るのが関の山。まあ、非常識人だからしょうがないっか? と、最後には納得・・・。
 ・・・納得? 出来るかー! と、あたしはブンブン首を振った。それじゃ済まないだろ。それで済む問題じゃないだろ! 今の今まで忘れてたけど、一応こいつ王子じゃん! 国で、かなり偉い人じゃん!? 偉い人がおかしくて良いのか? 良い訳がない。大丈夫か? この国は! と、いつかのように本気で国の行く末が心配になるあたし。
 だーっ! もう、どうしよう。せっかくちょっとは見直したリスのことを、再び疑いたくなるほど大混乱。でも、それ位おかしい。おかしいぃー!
 おかしいんだって。「踊れない、上品に喋れない、庶民であるというかハッキリ言って貧乏、人並みだが特別美人でもない、ついでにスタイルも普通、ここにいるのが絶対おかしい、エトセトラ」な、あたしに。
「二ヶ月後、東(の隣国)に行くんだけど、パートナーがいないと色々面倒だから、一緒に来てくれない?」・・・なんて。
 こんな事頼むなんて、おかしいでしょ!?
 どう考えてもおかしい。信じられない。どうかしてるよ。一体全体何考えてるんだ。本当にっ。
「・・・本気なの?」
「本気です」 
 ・・・本当に本気でマジか? マジなのか? お前。
 マジでおかしいのか? お前。




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