硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 3。

 本質は変わりませんよ。どんなに着飾っても。どんな立場でも。どんな場所でも。
 耳が痛い。キンキンする。何だ、この不快な声は。
 と思っていたら、その元が近付いてきた。ぎゃー。こっち来るな。と、あたしは思わず一歩後ずさる。
「お待ちしておりましたわっ。再びお会い出来て私、本当に嬉しく存じますー。ご機嫌いかが?」
 濃いめのピンクに白いヒラヒラがこれでもかと付いた、コテコテのドレス・・・を着た「キンキン」は、あたしとリスの間に割って入り、リスの腕を抱いてそんな声を発す。
 ・・・ああ、ごめんなさい。声があまりに特徴的だったから勝手にあだ名を付けてしまった。しかし「キンキン」。うん。これ以上にベストマッチな、あだ名はないよ。
 そう思って頷いたあたしの隣、リスは腕にキンキンをぶら下げながら(本当にそれ位、キンキンは体重を乗せてしがみついている)言った。
「ええ。とても良いです。そちらもお変わり有りませんか?」
 すげぇ。すげぇリス。あんたを、ちょっと見直したよ。彼女にそんな笑顔を向けられるなんて。何か少し・・・わざとらしいけど。
「ええ。とても元気です。今日は特に。お父様も待ち侘びています。早くいらして」
 と、彼女はそのままリスを連れていこうとする。あー。丁度良いや。二人で行って来てよ。と、あたしは小さく手を振った。くそぅ。ここが国外じゃなかったら、このままとんずらなのに。などと、ついさっき「頑張るぞ」と誓った気持ちは忘却の彼方へゴー!
 いやー。でも、目立ちすぎるな。この格好。動き辛いし・・・ああ、そうか。その為のドレスでもあるのか。参ったなぁ。うへー。どうしたもんか。
 と、明後日の方を見てドレスの裾を抓んでいたあたしに、リスの声が聞こえてくる。
「すいませんが、今日は相手が居ますので」
 そう言って彼は、あたしの腕を引っ張って引き寄せると、くるりと回転させて彼女と御対面させた。
「はい?」と呟き我に返ると、目の前にはキンキン。おおおい、何だよ。逃がさないぞってか? それとも、あたしを盾にしようとしてる訳? 極悪人ーっ!
「・・・まっ」
 一方彼女は、たった今あたしに気付いたような表情で「まあぁぁ・・・」と呟く。そしてペンキ塗りのように、視線は何度か上下してから「ふぁぁ・・・・」という、ため息。え? 何? どうしたの? 本当に気付いてなかったの? お前の目は節穴か?
 と、瞬きをすると風が起こるんじゃないか? と思われる睫の向こうに問いかけた。それ付け睫? それともマスカラ? どっちにしても程度が・・・はっ。いや、違う。いい、いかん。こんな事を考えている場合じゃない。頭の中で先生達が怒ってるー!
「は、初めまして・・・」
 と、時既に遅く、言いかけたのは・・・・・・不発。
「では、すいませんが、また後程」
 そう言ってリスは、あたしの手を引いて歩き出す。あわわわ。良いの? 彼女あのままで良いの? てか、あたしの努力はー!? と思いつつ、あたふたしながらもそれに従った。だって、かつて無く彼は強引だ。
 いや、強引ていうか、おかしいよ? あんた。何? 何か気に入らなかったの?
「ちょ、ちょっとリス・・・」
「良いんだよ」
 ・・・え?
 ぎくっ。とした。聞いたこともない、リスの声。低くて言い捨てるような、雑な言葉。
 ・・・あれ? 何怒ってるの? もしかして、逃げようとしたこと、ばれたの? と、黙ってしまったあたしに、リスは前を向いたまま言う。
「失礼にも程がある」
「はいすいませんでした」
「お前じゃないよ」
 そう言ってリスは歩調を緩め、やっと振り返って言った。
「人のパートナーを見る目じゃない」
「・・・パートナー?」
 聞き返しても、すぐにはピンとこなかった。何のことだか、サッパリ分からなかった。パートナーって? 何のこと?
 ・・・あれ? それ、あたしのこと?
 と思った時には、時既に遅く。リスの意識は他の方へ向く。そして問いかけようとしたあたしの言葉は、リスの名を呼んで近付いてきた紳士の声にかき消されてしまった。




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