硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 5。

 本質は変わりませんよ。どんなに着飾っても。どんな立場でも。どんな場所でも。誰と共に居ようとも。だからそれを隠そうと、人は着飾るんだと思う。
 そんなに意味のあるものなんだろうか。あたしの立場って。
「いやぁー。そうですか。クリスロット王子も、お相手を連れてこられるようなお年になりましたか」
「こちらの方は? ああ、パートナーの方でらっしゃるの? どうぞ宜しく。お会い出来て光栄です」
「可愛らしいお方ですこと」
「お似合いですわ」
 一体、何人と向かい合ったことだろう。
 ・・・という位の数をこなせば、笑顔を振りまき、握手することにも慣れた。挨拶も滞り無く出来るようになった。まあそれもこれも、全てはあの先生方のお陰であることは否めない。ナイスファイトです。先生。あたしをこんなに改造するなんて。
 そんなあたしに、ポツリとリスは言う。「お前、度胸あるなぁ」と。
「度胸?」
 その言葉を呟いて思う。度胸も何も。別に緊張すること無いじゃないか。と。あたしは、いわばミソッカス。へらへら笑い、握手を交わし、分かることなら応えればいいのだ。別に緊張する理由もない。何があっても困るのは連れてきたリスだからね。へっ。
 などと思っているとは、絶対思っていないだろう。リスは人の中、しかし誰もあたし達を見ていない時、感心したようにこうも呟いた。
「大したもんだよ。初めての時はシュリアだって相当緊張していたのに」
「・・・うん?」
 あらら。分かってない。
 首を振って「だってシュリアだもん」と言うと、リスは不思議そうな顔をした。もー。本当に分かってないなぁ。こいつ。そう思いながら解説をして上げる。「そういう弱いところも繊細なところも、シュリアっぽいってあたしは思うけど」って。
 儚げなところも、柔らかくて優しい微笑みも。そう。全部シュリアっぽいと思う。誰かの真似じゃない、彼女だけの雰囲気。だからこそ、思う。きっと彼女はこんなにいい加減な気持ちで・・・いや、失礼。
 だから・・・うん。きっと「ちゃんと」振る舞おうとして頑張って緊張したのだろう。ほらね、やっぱりシュリアっぽい。
 そう言ったら「え?」と言って、リスは笑った。
「そうかも、な」
 そして「ホントお前には敵わないなぁ」と、呟く。ふふふん、あたしをナメるなよ。と、鼻高々なあたし。簡単な女である。
「ところで、さ」
 さっきから疑問に思っていたの。と、リスの袖を引っ張って注意を引いた。
「何?」
「あたしさ」
 あたしってさ、何なの? 何か、変じゃない? ただ横に立ってれば良いものだと思っていたのに、そういうわけにもいかない。何故だ。どうしてみんな、むしろあたしに挨拶してくれるのだ。初めてだから?
 という言葉が、出る寸前だった。しかし。
「クリスロット王子」
 そう、声を掛けてきた初老の男性の声に阻まれ、それを全てに置いて優先するよう教えられていたあたしは、無意識のうちに口を噤んだ。




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