硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 2。

 強い気持ちは、全てを越える。例えば、驚き。例えば、事実。
 ぎょえーーーっ!?
 あたしは、がばっと起き上がって、そしてドアを見つめた。ビビッてる。ああ、ビビッているとも!
 そこから音は、もう聞こえてこない。まるで躊躇っているかのような、たった一度の小さなノック。気付かれなければいいと思っているかのような、矛盾を含んだ呼びかけ。
 それが余計に、あたしを緊張させた。リス、かも。リス、っぽい。どどど、どうしよう。うわわわ。
「・・・う・・・うーん・・・」
 頭を抱えて、取り敢えず唸ってみる。ドキドキドキ、ハラハラハラ。ビクビクビク、オロオロ。効果音だけ聞いたって、安堵や喜びは一つとして存在していない。有るのは動揺と驚きだけだ。あと、体の緊張だけ。
 でも結局、無視しようなんて気は一瞬だって起こらなかった。どうしよう。どうしよう。そう思いながらも、あたしはドアに向かう。ゆっくりとだけど。確実に。
「夜、一度個室に入ったら朝まで絶対にドアは開けてはいけません!! 絶対ですよ!! 当然ですが、部屋を覚えられてしまうのも中に入ってこられるのも危険です! 分かりましたか!? 分かったらハイと言いなさい!!! さぁ、言いなさい!!」
 と、しつこく・・・というか、何もしていないのに既に怒っている先生の声が甦る。こうなることを読んでいたのかもしれない。だとしたら、あの人達人間じゃないよ。ああ、怖い怖い。
 基、それは分かってる。ほら、覚えてます。ちゃんと今だって。はいはいはいはい。
 でも、でも、あたしはドアを開けます。躊躇っても、迷いなく。だって、絶対。
 絶対リスだから。



 そしてドアを開けてひょっこりと顔を覗かせると、思った通り。困ったような顔のリスが居た。ああ、出て来ちゃったこの子。という顔である。お前がノックしたからだろうが! あたしの聴力をナメるな! ナメてないよ。でも開けるなって言われなかった? 言われたよ。でも、あんたかあんな事言うから・・・云々。
 ・・・という会話を、多分お互い目でしてから、リスは言った。
「悪いけど」
「うん。悪い」
 お前は悪い。とにかく悪いぞ。あたし、そう思うぞ。
「・・・中入れて貰うよ」
 しかしリスは、そんなあたしの睨みなどどこ吹く風。ちょっと外に視線を逸らしてから、あたしの返事を聞かずに入ってきた。油断していたあたしは、その体に再び部屋の中へ押し込まれる。ちょっ。
「ちょっとま・・・っ」
 てーーーーー!! という・・・クライマックスの部分はリスの手に遮られる。何すんじゃお前ーーー!





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