硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
 3。

 強い気持ちは、全てを越える。例えば、驚き。例えば、事実。例えば、誤解。
「何よ」
 あたしは心中複雑。でも、ここは怒っても怒られない場面だろうと思い、頬を膨らませて言った。何なのよ。と。
 しかしリスは、こんな事を言う。
「半分は謝る。でも、お前も謝れ」
「何でよ!?」
「ドア開けただろ」
 いつもとは違う、本当にちょっと怒ってるみたいなリスの声。その声に僅か冷静になって、あたしは少し言葉に詰まった。
「・・・リスだと思ったんだもん」
 言い訳しながらも膨れっ面のあたしを見て、リスはちょっと複雑そうな顔をする。そして、ため息混じりに言った。
「・・・そうじゃなかったら、どうすんだよ」
「殴るか蹴るか首を絞める」
「・・・」
 迷いもなく堂々と言いきったあたしの言葉に、今度はリスが無言。あー。そうか。この子、そういう子だったな。と、今更思い出したかのようにリスは詰まった言葉を、大きなため息にして吐き出す。そして結局、迂闊なことを言った。と、反省したらしい。あたしに謝らせるのを諦め、無言でソファに腰掛けた。
「・・・どうかしたの? 疲れた?」
 いつもと様子が違うので、あたしは顔を覗き込んで問う。そのあたしの顔を見て、リスは顔を近付けた。キスでもされるのかと思って強張ったあたし耳元で、彼はとんでも無いことを呟く。
「今日、さ。ここに泊めて」
「・・・は?」
 あたしは緊張とか言葉の信頼度とか、そういうモノを図りかねて呆気にとられた。
「何で?」
 という台詞しか出てこない。
「・・・怒らないで聞けよ?」
「うん」
 約束は出来んけどな。と、密かに心の中で呟いた、あたしの心の声には気付かなかっただろう。当然。
 そして聞こえてきた理由は以下の通り。
「あんな所でお前の部屋に行くって言っちゃったから、お嬢さん達尾行してきたみたい」
 そう言って、ドアを指さす。
 ・・・はい? みんな揃いも揃って馬鹿じゃないの? と思いながら、あたしはドアを見つめた。
「多分、そこに張り付いてるよ」
 だから来ない訳にいかなかったんだよね。と、リスは言い訳のように言う。
 そうか。それで小声なのか。お前。分かった。事情は良く分かった。あたしは「うむ」と頷く。
 じゃあそいつ等みんな、部屋に戻せばいいだろー!? と、いきなりテンションの上がったあたしは、ドアに向かってスタートダーーーーッシュ!
 ・・・しようとしたあたしを、リスが素早く羽交い締め。何だこいつ。読めるようになってきたじゃないか。あたしの行動を。
 だったら心中も察してるだろーーー!?
「離せーーーーい!!」
 じたばたじたばた。手も足も振り回したあたしを、どうにか抑え付けながら、リスが声を殺して叫ぶ。
「落ち着け馬鹿!! 俺ソファで寝るからっ。迷惑掛けないから! お前がここ出てったら、ハッキリ言って何もかもぶちこわしな上、絶対怒られるぞ!?」
「怒られたって構うもんかー! 誰でも掛かってこいやーーー!」
「先生達にだぞ?」
「!」
 ぴたっ。その言葉を聞いた瞬間、あたしは止まった。ロボットみたいに止まった。正に停止ボタンに相応しい、その言葉。そして急に頭の冷えたあたしは、その後のことを考えてチャカチャカチーン。
 ・・・うん。そりゃー良くない。良くないね。うん。下手したら殺されるね。あの人達、本気で来るからね。刺し違えても! 位の勢いだから、余計怖いんだよね。うん、ありゃー厄介だわ。
「・・・分かった。諦める」
 似非でも馬鹿じゃないよ。
 あたしは自分の身を守る為の選択をした。




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