硝子の靴を履いたばっかりに(それを壊したばっかりに?)城に連れてこられた庶民なヒロイン。
手強い爺さん、群れるメイド。超非常識王子、エトセトラ。出るわ、出るわ、変な人。
こんな場所で大人しくしている彼女・・・なら話はそこで終わり、王子も汚れにならずに済んだ?
お互い、あり得ないほどに非常識な庶民と王子の、ラブになるかもしれないコメディ。
社交界の場に出るためには、色々な準備が必要なんです。
例えばドレス合わせとかね」編。

ノリだけでやっちゃう10題 サイト名:0501
(本編中のあれこれ。17、18の間のお話を、以下のお題でお届け)

01 あーりゃりゃこりゃりゃ!
02 遠慮します
03 ぶっちゃけすぎた話
04 愛があれば何でもできると思うな
05 俺様主義
06 歪んでしまったの
07 見せつけてやろう
08 てれてれてれてれウザいんじゃコラ
09 「やなこった!」
10 はい、ふざけすぎました







01 あーりゃりゃこりゃりゃ!
「レイラ様。さ。こちらに袖をお通し下さい」
「やだっ」
 メイドさんよりも僅かに早く部屋に入って来た、そのフリフリのドレスの裾を見た瞬間、あたしの答は決まっていた。借金返済のためとは言え、そんなお人形さんみたいなドレスが着れるか! そして似合うと思うか!?
 なんて、問うのもちゃんちゃら可笑しいわ!! 似合うわけがない。誰かに聞かなくたって分かる。似合わない! 笑っちゃった後に泣きたくなるだろう。だから、やだっ。やだーーーっ。
 よって、断固拒否!! とばかりにキッパリと拒否して背を向けた、あたしの背中を見ながらメイドさん達は顔を見合わせる。今日は三人ご出勤。大体、服一枚着るのに、何だってそんなに人が必要なのだ。逆に言えば、そんな面倒な服、着たくない。着ないっ!!
 ほらね。了解できる要素はゼロ。だから絶対やだっ!! やーーーだーーー!!



02 遠慮します
「レイラ様ー。そうは申されても、色々試してみないと本当にお似合いになるかどうかは分からないじゃないですかぁー・・・」
「着なくても分かります!」
 そもそもドレス自体が似合わない人間なの! 庶民なの! そんな分かり切ったことを、敢えてさせようとするお前達はメイドという皮を被ったメイドだ!!
 ・・・って、当たり前だ!! あたしのアホーーー!!!
「レイラ様ー・・・」
「ノーサンキュー!!」
 自分の心の声に躓いたあたしは、意地になって遠慮した。



03 ぶっちゃけすぎた話
「まぁー・・・じゃあ、今回は止めておきましょうか」
「そうですね・・・」
「これはね・・・」
 と、メイドさん達のヒソヒソ声が聞こえてくる。随分物わかりの良い、珍しい態度。いつもだったら押さえつけてでも着せようとするくせに。
 そうだよなぁ。あれ、どう考えても似合わないよなぁ。癪だけど、それは誰もが思う事実だろう。逆に、分かってるなら持ってくるなよ。
 そう思っていたあたしの耳に、とんでも無い真実が聞こえてくる。
「クリスロット王子も、これはどうかなぁって言ってたもんね」



04 愛があれば何でもできると思うな
 ・・・なんですと?
 メイドさんが呟いた信じられないその言葉に、あたしは影でギョッとした。
 あいつ、そんなことまで口出してるのか! 女物のドレスにまで!? 信じられない! 愛があれば何でもできると思ってるのか!? んな訳、無いだろ!!!
 いや、それ以前に。
 そもそも愛なんてここにはないんだから、何一つできると思うなってんだーーー!!!
 背を向けたまま、握りしめた拳は震える。大体、誰のせいでこんな事になってるんだ! 誰が持ち込んだ仕事だと思って・・・っ。
 そのあいつが、これはどうかなぁって? 言ったって? ・・・ちくしょーーーっ!!!



05 俺様主義
 どうせ似合わないよっ。あたしだってそう思う。似合わないっ・・・とは思うけど。
 最早、そういう問題じゃない。
 くやじいーっ。あいつが王子じゃなかったら、こんな俺様主義許さないのに!! ボコボコに殴ってやるのに!!! 王子じゃ・・・王子じゃなかったら・・・っ。
 ・・・ていうか、一億の借りが無ければっ。そうだ。殴るのに躊躇う点はそこだった。それさえなければっ。ああ・・・貧乏って切ないーーーっ。
 結局、行き着く先はそこ。金ってヤツは一番大事な物じゃないくせに、庶民の心を時々揺さぶる。



06 歪んでしまったの
「着たる!!!」
 振り返って、あたしは叫んだ。その声に、メイドさん達が飛び上がって肩を強張らせている。その手には、フワフワと波打つピンクのレース。
 ・・・の、固まりにしか見えない。思わず一瞬怯んだものの、勢いの固まりと化したあたしは止まれなかった。何でも良い。反抗できれば。そんな僅かな意地のせいで。
「着れば良いんでしょ!? 着たるわ!!」
 冷静に考えれば自爆発言と言っても過言ではないのに、頭に血が上ったあたしの心境は以下の通り。
 やったる!! 似合わないことなんか、構ってられるか! あいつに逆らうためなら、似合わないドレスだって着たるーーーー!!!
 そして理性を失った人間の行く先を、あたしは十数分後に知ることになる。人間はこうやって大人になっていくのだ。・・・きっと。



07 見せつけてやろう
「・・・」
 そして我に返り、鏡に映った自分は、どう見てもどっかの人形・・・みたい。それも顔を見なければ。服だけ見ていれば。
 だって、似合うわけがない。似合ってなんかいない。分かっていたし、実際その通りだった。似合わねぇー! こんなにも似合わない物なのか。と呆れるくらい、似合わねぇーーーー!!!
 それでなくても面白くない気持ちをを通り越して引きつっている自分の顔に似合う服など、この世にあるわけ無いのだ。そしてこのピンクのヒラヒラは、その中でも最たる物であることは間違いない。これでもかと「似合わなさ」を遺憾なく発揮している。素晴らしい。このコラボレーションは、世の中なかなか無いだろう。
 しかしそう思うのもかなり癪になって、ツンと顎を上げてみる。どうだ。この庶民の生き様、とくと見ればいい!!! なんてな。
 そんなやけくそなあたしの背中の方で、ヒソヒソと話し合う声。
「あら。あらら」
「意外に・・・」
「黙っていれば・・・」
 嘘だろ。と、メイドさん達の目を疑ったあたし。
 ・・・じゃ、なかった。黙っていればって、おいコラ。



08 てれてれてれてれウザいんじゃコラ
 それにしても。
 ちょっと動く度に、足にも腕にも触れる柔らかいレース。
 邪魔だーーー!!!



09 「やなこった!」
「どうしましょうか?」
「どうしましょう」
「これは予想外ね・・・」
「・・・」
 一人では脱げないので、メイドさん達が会議中、放置状態のあたし。もうどうにでもしてくれ。という気持ちで遠くを見つめていた。
 そのあたしを撫でるレースの感触。まるで子供が怒った大人に縋っているようにも見えてきて。・・・この子に罪はないと思うと、急に可哀想になったりして。
「やっぱり、これは・・・」
「一度・・・」
「クリスロット王子に見せ・・・」
 ふわふわふわ。花弁みたいにふわふわふわ。触り心地は良いんだよなぁー。
 そんなことを思いながら、レースを抓んだりヒラヒラさせたりして暇を潰していたあたしは、その言葉にそれを引きちぎらんばかりに握りしめて叫んだ。
「ふざけるなぁーーー!!!」



10 はい、ふざけすぎました
「じゃあ・・・」
「やっぱり・・・」
「止めておきましょうか」
 発狂寸前のあたしに気圧されたのか、メイドさん達はそそくさと着替えの準備を再び始めた。全くもう・・・と思いながら、ようやく服を元に戻して大きなため息を付いたあたし。
 そのあたしに、部屋を出ていく寸前のメイドさん達の話し声が聞こえてきた。
「そもそも、クリスロット王子が気に入ってないから・・・」
「一番、そこが問題よね・・・」
「そこがクリアしてればねぇ。勿体ない・・・」
「そんなこと関係ないだろーーー!!!」
 殴るようにぶつけたその声は、逃げるように外に出て音を立てて閉まったドアにぶつかった。凄い素早さ。分かってやってると思うから余計に腹が立つ!
 ギリギリギリギリ。歯軋りをして思った。
 もう。
 本当にもう。
 何考えてるんだ。メイドさん達は!

 それに・・・。
 それに、あの馬鹿王子もーーーっっ!!!







おまけ。しかし実際は。編。
 翌日。
「失礼致します。クリスロット様ぁー」
「今日はこちらを試着していただこうと思っているんですけど」
「どう思われますー?」
「・・・」
 また来た。と、リスはガックリと肩を落とした。気持ちの良い昼下がりの話。
 緩やかな曲線を描きながら、そよ風に揺れている白いカーテンはまるで羽根のようにも見えた。磨き上げられた調度品は、その隙間からの光に僅か輝き、テーブルの上の小さなカップからは甘い香りが零れている。
 そんな自室で、呆れた顔をする王子。思わず呟いた。
「何で俺に聞きに来るんだよ・・・」
 仕事の合間。束の間の休憩を取っていたのに。と、言いかけはしたがメイド達のあまりに楽しそうな表情に口を噤む優しい上司。
 しかも、お茶を注いでいるメイドも満面の笑顔。書類を整理している執事でさえ、それを咎める気配はない。何で? 何で? うちの使用人達は一体どうした訳? 正直そう思っても、あまりの団結力に反論も口から出ず。
 納得がいかないのは王子も同じ。結局の所、ドレス合わせは、ただ単なるメイドの趣味と楽しみであった。




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